※2018年 8月 3日に公開した記事ですが、追加修正を行い2019年 1月17日に再度公開いたしました。※
こんにちは。(株)イシカワの吉川です。
今回は、Rio de piedraのスタッフがこぞって一押しの日本の伝統技法を取り入れたクロコレザーをご紹介いたします。
その伝統技法の名は、阿波正藍染(あわしょうあいぞめ)。
日本の藍(あい)は、JAPAN BLUE(ジャパン ブルー)として世界に知られ、サッカー日本代表ユニフォームのジャパンブルーは元々、この藍色のことを指し、2020年東京オリンピックの大会イメージカラー・エンブレムにも藍色は採用されています。
日本の伝統的な革作りの技術と藍染技術が見事に融合した「阿波正藍染クロコレザー」
世界のメゾンブランドも注目する、藍染クロコレザーを詳しく解説していきましょう。
藍色はなぜ、ジャパンブルーと呼ばれるのか。
ジャパンブルーのことばのルーツ…
なぜ藍色がジャパンブルーと呼ばれるようになったのでしょうか?
奈良時代に中国から伝来してきた藍染めは、江戸時代より阿波(徳島県)で盛んに行なわれ、作業衣から高級衣装まで藍色の衣類は国民に愛用され普及してきました。
その後、明治時代になり開国した日本に来日したイギリス人化学者(アトキンソン)は、藍を染料とした「ブルー」を使った、のれん・着物・制服など、あらゆる藍染めが日本中にあふれていることに驚き、強く印象に残ったことから、「藍色=ジャパンブルー」をいちばん最初に提唱し、賞賛しました。
明治中期に入ると、藍の「ブルー」は暮らしの基本色となり、「日本は神秘的なブルーに満ちた国」と、来日したてのラフカディオ・ハーン(小泉八雲)も絶賛したのです。
日本の伝統的な色、ジャパンブルーのことばのルーツは、明治の時代に生きた人々の暮らしの中にあったのです。
何が違うのか?阿波正藍染の特徴とは。
徳島県は藍染の一大産地として、長い歴史を誇り隆盛を極めました。
この地で作られた天然の藍染料を「スクモ」と呼びます。この染料「スクモ」は高品質な「阿波藍」として別格の扱いをされています。スクモによってジャパンブルーと称される濃い青、紺色が生まれるのです。
この地方の「阿波藍」はその品質の高さから「正藍」。ほかの地方の藍は「地藍」と呼ばれ区別されており、日本各地で貴重にされ、ブランドとしての価値が認められています。
藍染めの方法は生葉(なまは)で染める「生葉染め」もありますが、徳島の藍染は、阿波藍を原料にして「発酵建て」という特殊な方法で染められます。
この「発酵建て」の藍染めは業界全体の1%程度と言われ、阿波に古来から伝わる伝統的な藍染め技法であり、特徴となっています。
また、昭和43年には国選定・無形文化財に「阿波正藍染法」として指定された日本トップクラスの染色技術なのです。
阿波正藍染 クロコレザーはどのように作られるのか。
徳島の無形文化財であり、伝統技法である「阿波正藍染法」を用いて自然が生み出した唯一無二の素材、クロコレザーを染色するという「業界初・日本初」の作業はどのような工程で進められていくのか。
本来は衣服などの繊維製品が、中心で行われる藍染作業ですので、実績もなければレシピもなしの期待と不安が、入り交じった新たな試みです。
先にお伝えしたように、徳島の藍染は「発酵建て」という方法で行います。
このやり方は、まず、原料である阿波藍の葉や茎を細かく刻んで発酵させて作る染料「スクモ」を作ります。
そして、この発酵染料の「スクモ」に灰を溶いた灰汁(あく)などを加えて、溶かしていき「染め液」が出来上がります。日本の伝統的な藍染めは土の中に埋めこんだ瓶(カメ)の中でそれを行います。
出来上がった「染め液」にクロコレザーを浸けて藍を含ませてから引き揚げ空気にさらします。空気に触れ「酸化」することにより、クロコは青色へと発色が徐々に進んでいきます。
一度に濃い色に染められないために、希望する「ブルー」の濃度になるまで、この作業を熟練した職人が何度も繰り返し、藍色のクロコが染め上がる技術と経験がものを言う重要な作業です。
阿波正藍染 クロコレザーの魅力とは。
クロコレザーも藍を染めることができるという事は、あまり知られていないと思いますが、実はヨーロッパメゾンブランドも注目しているアイテムでもあるのです。
それでは、藍染クロコレザーの一番の魅力とは何なのでしょうか?
藍染めの魅力それは、やはり色そのものにあると考えています。
レザーに色を付ける従来の化学染料では表現できない「天然藍色」の色彩美・色の冴え・色の深みを生み出すところにあります。神秘的で深く澄んだブルーは、他に類を見ない彩りです。
見る者の心を魅了する力を、手前味噌ではありますが、この「青色」はもっています。
また、クロコレザー表面に人工的な加工を施さずとも現れる、藍染めならではの品のある絶妙なグラデーションは「和モダン」な雰囲気も合わせ持っています。
使う度に少しづつ表情を変えて味のある風合いが増えていく…
そんな共通の特徴を持つ「阿波藍×クロコレザー」のコラボレーションは、「秀逸を極めたアート」と言っても過言ではないと思います。
阿波正藍染クロコレザーは持つ人の日常の中で磨かれていき、より一層ユーザー様を素敵に魅せてくれることでしょう。
藍染クロコの製品を見た弊社のお客様からも、「クロコに対してのイメージが変わった」「クロコ製品は今まで興味がなかったけど、このブルーは別格」と、今までにないご好評のお言葉をいただけております。
無形文化財を身につける
Rio de piedraが取り扱う藍染めクロコは、着手から10年以上の試行錯誤を繰り返し、ブルーの色気・クロコの硬さ・藍染特有の上品なグラデーションなど、それぞれの特徴を活かした完成度の高い「阿波正藍染クロコレザー」を厳選してご用意しております。
その製作技法・技術が確立されてから、まだ間もないということもあり、日本だけでなく世界を見回しても、「阿波正藍染クロコ」の製品を取り扱っているところが限られているため希少性が高い、というところもオーナーになる方にとっての、価値と言えるのではないでしょうか。
「無形文化財」とは簡単に言うと、「日本国にとって芸術上価値の高いもの」を指します。現代人が常に持ち歩くモノの1つがお財布。Rio de piedraの「阿波正藍染クロコ」を使用して作られたお財布を持つ、ということは「世界的メゾンブランドに先駆けることになる」ということも、胸を張ってオススメできるポイントでもあります。
世界に誇れる藍染クロコ
なかなか出会えることのない、プレシャスなレザーでもある阿波正藍染クロコ。完成した革の色合いは、天候・水温・時期など、それぞれの条件が「一期一会」で重なり合い、天然のグラデーションを生み出します。
「身体の中心の深く深くに刺さった」「言葉にできない美しさ」「理屈じゃなく、心が落ち着く」等々、藍染クロコの神秘的なブルーに魅せられたお客様からも、嬉しいお言葉をいただいております。
古来の日本では藍染の色は褐色(かちいろ)=勝ち色とも言われました。縁起物として武士に好まれ、鎧の下に着る肌着や、鎧に使用する糸にも藍染の色が使われていたそうです。
このような理由から、意識の高い経営者のお客様からも「縁起の良いモノ」として好んでいただける傾向があります。
現在、Rio de piedraから発売されている藍染クロコのお財布は2種類。
1つはクロコの王道センター取り長財布。
「見たことのない色のクロコ」「今までクロコを持ったことないけど、呼ばれている気がする」など、クロコ好きの方にも、今までクロコ製品を持ったことのない方からも好まれています。
もう1つはメッシュ(編み込み)長財布。
裁断したクロコの革を編み込んで、一枚のお財布用のシートが出来上がります。クロコのメッシュ編み込み技術を伝承されている職人さんは、年々少なくなっています。
これはつまり、藍染クロコメッシュの財布を作れる職人さんは世界でもごくわずか、ということ。メイドインジャパンの職人技術が誇れる藍染メッシュ長財布が、Rio de piedraの誇りでもあります。
藍染めクロコのメンテナンス・お手入れ
阿波正藍染クロコの日常のメンテナンス・お手入れについてもお伝えしておきましょう。
藍染めクロコレザーを含むレザー全般は、雨・水・湿気を嫌います。濡れた時などは、直ちに乾いた柔らかい布などに吸い込ませるように、軽くたたいて水分を取り去ってください。
取った後は必ず、風通しの良い所で自然乾燥させてからご使用・保管するようにしてください。
また、日常ご利用になった後は、柔らかい乾いた布で、クロコ表面に付いた汚れや手汗などに含まれる不純物を円を描くようにやさしく拭き取る、乾拭きをする習慣をつけると良いでしょう。クロコを良いコンディションに保ち、長持ちさせることにも繋がってきます。
日頃のお手入れは乾拭きだけで十分です。メンテナンスクリームなどのお手入れ剤の使用は避けてください。表面のベタつきなどを誘発してしまします。
そして、藍はタデ科の一年草の葉や茎から作られる染料を使用していますので、水・光・熱には注意が必要です。
特に長時間紫外線(日光)に当たり続けることや、至近距離での白色灯・蛍光灯による照明は、クロコレザー表面の温度を上昇させてしまい、変色・色あせ・色彩のくすみなどの退色反応を促してしまう可能性があります。
以上のことに留意されて、藍染レザーアイテムをご愛用いただければ幸いです。
最後に
この度のクロコレザーの藍染は、江戸の頃より人々が慣れ親しみ、平成の時代まで伝承され続けてきた阿波藍染の歴史の中でも初めての試みです。
全てが順風満帆に進んだ訳ではありませんが、日本の文化が大切にしてきた「伝統」と「革新」をジャパンブルー×クロコで表現できればと、技術者が一丸となって創作いたしました。
多くの方々に少しでも作り手のプライドを感じていただければ幸いです。