エキゾのこと相談できる人がいないんです!クロコダイル・パイソンの相談事例 Q&A

こんにちは。(株)イシカワの吉川です。

最近では、Rio de piedraブログを見ましたという方々からクロコダイル・パイソンをはじめとするエキゾチックレザー製品に関する相談や質問をよくお受けするようになりました。

高級素材だからこそ気になったり、回りにはエキゾレザーに詳しい人は皆無な状態なので、価値基準・トラブルの原因・対処方法などを知りたいというのが主旨となっています。

そんなご要望が多いという状況も踏まえ、今回は皆様からご質問の多かった相談事例をQ&Aのスタイルでわかり易くご紹介していきましょう。

バッグ・革小物の本格ブランド【Rio de piedra / リオ デ ピエドラ】

 

Q1:クロコダイルグレージング(シャイニング仕上げ)のツヤが無くなってきたが直せますか?

 

A:クロコダイル革特有の透明感のある発色と光沢(ツヤ)、そして美しい輝きが特徴のクレージング仕上げ。最近はシャイニング仕上げとも呼ばれています。

クロコグレージング仕上げ革のツヤがなくなる原因は、ご使用になる過程の中で、革表面の変化に伴い、起こると言われています。

日常生活の中で、表面に細かいシワや擦り傷は少なからず発生したり、個人差はありますが、お持ちになる方の手垢や汗などの物質の付着が表面の変化として挙げられます。

シワや擦り傷・手垢や汗などの付着は、光の乱反射を起こし、人の目にはツヤがないように見えたり、グレージング特有の光沢を低下させてしまいます。

一部、仕上げの種類によっては、無くなった光沢をある程度まで回復させることも可能です。

新品同様とまではいきませんが、修正を必要とする場合は、必ずその製品を購入された店舗に、なるべく早く相談することが不可欠です。

使用時の丁寧な取り扱いや手垢・汗などの汚れを誘発させる物質が着いた場合は、柔らかい布ですぐに拭き取ることや、使用後に全体をサッとひと拭きすることを、習慣づけることも大切です。

ツヤ低下の予防策になりますので・・・

そして、素材や光沢の塗膜はいつまでも不変ではなく、ご使用になる頻度・環境により劣化が経時的に起こっていると理解することも、必要になってきます。

 

Q2:クロコダイル商品が黒ずんで汚れたようになってきたが基に戻せますか?

 

A:ツヤ感を抑えソフトな感触が特徴のクロコダイルマット系仕上げの革は、手の脂(あぶら)・汗や汚れが過度に付着すると黒く変色し、テカリがでやすい状態になってきます。

お仕事などで毎日のように使用する、特にバッグのハンドル部分やスマートフォンケースなど、手に持って使う頻度が長時間に及ぶモノは、その時に手の脂がしみこむことは避けられません。

手の汗・脂により、時間の経過と共に塗膜が劣化し、塗膜を通して内部まで脂がしみこみ黒っぽく変色することがあるのです。

特に手汗が多いと感じている方は注意が必要です。

鮮やかな色や薄い色の皮革はクロコダイルに限らず、汚れが付きやすく目立ちやすい傾向にあります。

使用後にはこまめに乾拭きをして、付着した汚れや表面の脂を除去することによって、多少変化を抑えることはできます。

しかし、完全な防止策ではなく、内部まで浸透したあぶらや汚れは、薬剤などで除去しようとしても修復することはできません。

また、長い目でクロコダイル製品を選ぶ時に、黒ずみが比較的目立たないブラックやネイビーなど、濃い目(ダークトーン)のカラーをチョイスするのも、一つの考え方です。

 

Q3:クロコダイル・パイソン製品の変色や色あせについて教えてください。防ぐ方法はあるのでしょうか?

 

A:少し専門的な説明になりますが、エキゾレザーを含む皮革全般は、洋服などの繊維やナイロン・羊毛などと異なり、色を付ける染料との結合を高める、「高温染色」という手法を用いることができません。

しかもエキゾチックレザーを代表とするクロコダイル・パイソン革の染色は、本来持つ独特な素材感を活かすために、染色の結び付きが強い顔料(塗料・ペンキのようなもの)などを使用せず、水に溶ける「染料」を使い染色を行い仕上げます。

顔料を使用すると、革の表情は画一的な見た目となり、「型押し革」に似た趣になってしまうからです。

染料を使用した革は、長時間紫外線(日光や蛍光灯)や排気ガスなどにさらされると、表面が変質してしまい、変色・色あせ・色彩にくすみがでることがあります。

また、革表面の温度の上昇により、これらの傾向が促進されると言われています。

至近距離での白色灯・蛍光灯による照明は、革表面の温度を上昇させ、退色反応を促してしまいます。
十分ご注意ください。

日光や蛍光灯の照射による色の変退の程度は、革のなめしや仕上げ方法の違い、染料の種類によっても大きく異なってきます。

これらのことに留意されて、ご家庭や職場であれば、直射日光や強い光の当たらない場所に置いておく、保管するなどの予防を心がけてください。

日常のちょっとした気配りが、大きな差を生み出し、トラブルを避けることができるのです。

 

Q4:パイソン革(ヘビ革)のウロコが剥がれたり、めくれたりすることはありますか?

A:パイソン革のウロコのめくれについては、めくれ上がりを直したいという場合と、ウロコのめくれは、革の本物としての証であるのは承知の上だが、取れたり(剥がれたり)しないか。という質問・相談があります。

パイソン革には特有のウロコがあり、形状やウロコの先の「ヒラヒラ」が魅力のひとつとなっていて、この「ヒラヒラ」がめくれ上がるのです。

天然のヘビ革と牛革などの型押し革との違いもこのようなところに見られます。

「型押し革」を本物に見せるために、ウロコ上に一枚一枚切込みを入れて仕上げたモノもあるくらいです。

パイソン革のウロコがめくれ上がるのは、使用している内に徐々にウロコが起きてきたり、ウロコとは逆方向に強く押つけられたりした場合に起こることがあります。

また、ウロコが剥がれ取れることについては、日常生活の中で使用される場合ではまず考えられません。

もし、剥がれるとすれば、ウロコを何かに引っ掛けたり、故意に強い力で引っ張ったり、革の厚みが極端に薄く、強度が弱い(補強がされていない)場合に起こることがあります。

剥がれてしまったウロコを直すことはできませんので、注意が必要です。

硬くなっておらず、軽くめくれている状態であれば、専門的な手法により直すことも可能になってきますので、ご購入先へご相談することをおすすめします。

 

Q5:クロコダイルをはじめとするワニ革の表面のウロコ形状を含めた部位の特徴・価値などを教えてください。

A:クロコダイル革は「アゴ」「腹(胴)」「尾」の3つの部位に大きく区分され製品の用途に合わせて使用されています。

表面のウロコの形状で一番美しいと言われている部分は腹部の「四角形のウロコ」の並びと言われています。

特にスモールクロコダイル(ポロサス)の腹部は細かく綺麗で美しいとされ、クロコダイルの最高級品種と位置付けられています。エルメスをはじめとするヨーロッパメゾンブランドがこぞって入手に力を入れているクロコダイル革です。

そして、横腹(ワキ腹)の部分の「丸型のウロコ」がその次に美しいと言われています。

サイド革とも呼ばれ、四角形のウロコより細かく小さいため、ベルト・時計ベルトや靴などの細かいパーツにも使用されています。

また、この四角形のウロコ部分と丸いウロコ部分が共存し、かつバランス・コンビネーションの良いものが、もっとも価値があるとされています。

これが「センターカット」と呼ばれる革の取り方です。

クロコ腹部分の真ん中(センター)を財布・バックの中心に合わせて主要な部分を型入れする方法でウロコの形状が左右対称(シンメトリー)となります。

「アゴ」の部分は、腹部に似た四角形・丸形のウロコが配列されています。

「尾」の部分は四角形(長方形状)のウロコのみが並列しており、丸型のウロコはありません。

最近では、ヨーロッパのトレンドやワイルドな雰囲気が漂う、長方形状のみの尾部分(テール)を使用した製品も出回っております。

 

Q6:リザード(トカゲ)・パイソン革の表面のウロコ形状を含めた部位の特徴・価値などを教えてください。

A:日本国内で多く流通しているトカゲの代表種であるリングマークトカゲの背部分は、丸い粒上のウロコで、背中に「輪」状及び「点」状の斑紋(はんもん)が並んでいます。

この斑紋を活かしたタイプと、斑紋を脱色し除去したタイプがあります。また、腹部を割き背部を活かしたものを「フロントカットタイプ」反対に、背部を割いて腹部を利用するものを「バックカットタイプ」と呼んでいます。

リザードの背部は、米粒状の丸いウロコが品良く美麗に揃っています。

また、腹部は長方形状の四角いウロコが並列し、背部とはひと味違うワイルドな表情を見せています。

個性的な斑紋(はんもん)やウロコ模様を持つパイソン革は種類により異なりますが、斑紋の模様の特徴やだ円形のウロコが連続し、その天然のバランスに美しさがあります。

リザードと同様に、背中を活かしたフロントカットタイプと腹部を活かしたバックカットタイプ、そして個性的な斑紋を活かしたタイプと脱色したタイプがあります。

パイソンの特に、背中を割いた「腹部の中心」に並列している大きめの蛇腹(じゃばら)は個性的な存在感があり、バッグ・財布・靴など多くのアイテムに使用されて皮革ファッションには欠かせない素材のひとつとなっています。

 

Q7:クロコダイル革やパイソン革などのエキゾレザーの強さは、他の皮革と比べて強いですか、弱いですか?

A:エキゾチックレザーは現実に、世界を代表するヨーロッパメゾンブランドや屈曲(くっきょく)を絶えず繰り返す靴にも、これを使用し販売されていることから考えても、耐久性を持ち十分に利用できます。

例えば、クロコ革は一般革(牛革・馬革・羊革・豚革など)と比べて革の構造は、「緻密(ちみつ)」な繊維層を持っていると言われています。

クロコが色付き革に仕上がるまでに約3か月を要するのに対し、一般革は約2~3週間たらずで仕上がってしまいます。
製革に使用する薬品などの浸透がしやすく、「繊維の構造」から短時間で作れてしまうわけです。

革の丈夫さを示す「引き裂き強度」は、繊維がどれだけ密に絡んでいるかで革の強さが決まります。

ただ、これも比較の対象となる一般革とクロコ・パイソン革の厚みが同じだったり、さまざまな条件が一緒であればということが前提にはなってきます。

クロコ・パイソン・リザード・オーストリッチなどのエキゾチックレザーのような形や組織に特異性を持つ皮革は、製品や用途に合わせてその特性が発揮できるように厚さや強度などの調整などを施します。

それらの調整によりエキゾレザー製品は、一般革を使用した製品に引けを取らない強度・耐久性を兼ね備えているとご理解いただいてよろしいかと思います。

 

 

最後に

今回の説明内容は、私が30年間この業界に身を置き、業務で経験したことや諸先輩・先生と呼ばれる専門知識を有する方々から学んだ知識を集約してまとめてみました。

あくまでも一例であり、「絶対的」なものとは言えないところがあることをご承知おきください。

クロコダイル・パイソンをはじめとするエキゾチックレザー・ユーザーの皆々様のご参考になれば幸いです。

直接のご相談も承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

 

※転載参考文献
全日本爬虫類皮革産業協同組合
一般社団法人 日本皮革産業連合会
「エキゾチックスキンの基礎知識」(2015)

 


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