ファッション誌では教えてくれない、保存版:ワニ革の基礎知識

※2017年 11月24日に公開した記事ですが、追加修正を行い2020年 7月2日に再度公開いたしました。※

こんにちは。(株)イシカワの吉川です。

エキゾチックレザーの中でも、ヨーロッパメゾンブランドも注目し、世界各国でその確保に力を注いでいる素材がワニ革(クロコダイル・アリゲーター・カイマン)です。

最近ではユーザーの皆様から、「クロコダイルの種類」を指定されたり、「うろこの形状」の希望を受けたりと、ワニ革へのこだわりを持つ方やクロコダイルの特徴や価値・魅力を熟知されている方々が増えているように感じます。

そこで今回は、ワニ革をはじめとするエキゾチックレザー講習会講師も務めさせていただいている私が、クロコダイルの種類や見分け方、そしてクロコダイル革の特徴などを中心にわかりやすく解説していきます。

 

 

ワニ革の現状

エキゾチックレザーの代表格がワニ革です。
最高級の皮革素材として世界中で愛され、年間約100万枚が原産国より各国へ出荷され取引されています。

ワニ革は高価な価格で取引されますので、養殖事業が成り立ちます。そのため現在ではワニ革の約90%ぐらいが養殖です。野生のワニの取り扱いは非常に少ないのが現状です。

ワニ革は大きく「クロコダイル・アリゲーター・カイマン」の3種類に分類されています。ワニを背中から割き、腹の部分を使用する「肚(ハラ)ワニ」逆に腹から割き背のゴツゴツを使用する「背(セ)ワニ」の2タイプが皮革として利用されています。

「肚ワニ」は高級感・色・デザイン・仕上げ方法など作り手のインスピレーションを実現しやすく、メゾンブランドを筆頭に世界的にも使用頻度が高く、ワニ革の主流を占めています。「背ワニ」は独特な「コブ」のインパクトが絶大で、ワイルド感・男らしさを表現するのに珍重されています。

それでは、クロコダイル(4種)・アリゲーター・カイマンを「肚ワニ」の画像を交えてご説明していきましょう。

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イリエワニ:スモールスケールクロコダイル

まずはクロコダイルの中でも希少性の高いイリエワニからご説明いたします。

腹部の四角形をしたうろこは他のクロコダイルと比べると小さく綺麗で、横腹のうろこの形状は丸く全体のバランスが整っているのが、スモールクロコダイルの特徴です。ワニ革の中でも最も高級とされています。ヨーロッパでは「ポロサス」とも呼ばれています。

業界内では、四角形のうろこを竹の節のように見える事から「竹斑(たけふ)」丸いうろこを「丸斑(まるふ)・玉斑(たまふ)」と称しています。スモールスケールクロコの「スケール」とはうろこの事を指し、「小さいうろこのクロコダイル」という意味になります。決して「小型で小さいクロコ」という意味ではありません。

肚幅が 1m ぐらいある大型のものでも、スモールスケールクロコは存在します。誤解されませんようご注意下さい。

外見の美しさと需要と供給のバランスから高値で取引され、ヨーロッパのメゾンブランドはこのイリエワニを集めることに努力しています。メゾンブランドでは自社で養殖場を持ち安定的な確保に努めているところもあるぐらいです。

美しくバランスの取れたうろこの比率が高級感をさらに引き立てるスモールクロコ、「キング・オブ・クロコ」と呼んでも過言ではありません。クロコダイルの中でも「 格別 」の存在です。

美しくバランスのとれたスモールクロコでも、うろこの縁付近に針でつついたような「穿孔(せんこう)」と呼ばれる小さなくぼみがあります。これは感覚器官とみられ、今回紹介する4種のクロコダイルには全て備わっており、クロコ革の特徴でもあるのです。穿孔が目立つ、目立たないという個体差はありますが、革のグレードが悪いという解釈ではなく、クロコの「証」であり、言いかえれば「 穿孔 」があるからクロコダイルと称せるのです。

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ニューギニアワニ:ラージスケールクロコダイル

腹部のうろこは正方形に近く、うろこの大きさはスモールクロコよりも大きく、横腹のうろこは丸い形状をしているのが、ラージクロコダイルの特徴です。名前の通り、ニューギニア島のみに生息するワニで、日本では古くから広く使用されているクロコダイルの種類です。

ラージスケールクロコの「ラージ」とはうろこの大きさを指し示し、「大きいうろこのクロコダイル」という意味になります。よって、「サイズの大きい大型のクロコ」という解釈ではありません。
同じ横幅のスモールクロコとラージクロコを比べるとスモールは細かく小さいうろこで、ラージはそれに比べると大きいうろこであるとわかります。

ラージクロコは養殖での生産は行わず、ほぼニューギニアの川や沼の淡水に住む野生のワニが捕獲され供給されています。ワシントン条約上、野生の捕獲が認められている数少ないワニ革であり、生息数を減らさないよう、調整されています。世界取引量も他のワニ革に比べ少なめです。

クロコダイルの種類の中では価格的な面で見ると比較的リーズナブルなワニ革です。うろこの大きさから表現されるワイルド感はラージクロコの特徴でもあり、野性味に魅力を感じる方々にはオススメの種類です。

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ナイルワニ:ナイルクロコダイル

腹部は長方形をしたうろこで細かく整然と並んでいます。イリエワニ(スモールクロコ)より若干大きいですが、細かく綺麗で、横腹のうろこは丸みのある長方形をしており、その幅は他の種類より狭いのがナイルクロコの特徴です。

スモールクロコ・ラージクロコと同様に、日本ではポピュラーなワニ革です。世界的にも需要があり、高級品用の素材としてヨーロッパでも古くから使われ注目を浴びているのがナイルクロコダイルです。

現在供給されている皮は、ほとんどが養殖のもので、主にジンバブエ・南アフリカ・ザンビアなどのアフリカの国々で大規模ファームで養殖生産されています。ナイルクロコの世界取引量は年間約30万枚でかなり多く利用されています。

世界のトップブランドも入手しやすく、数量を確保できるため表面にアンティーク・スエード(起毛)・プリントなどの特殊な加工を施したナイルクロコのアイテムが数多く登場しています。用途は主にハンドバッグ・財布などの小物などです。

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シャムワニ:シャムクロコダイル

腹部のうろこの形状は長方形で、スモールクロコに似ています。しかし、うろこの大きさはスモールクロコより大きいが、ラージクロコより小さい。スモールクロコとラージクロコの中間の大きさといったところで、横腹は丸みのある形状をしてるのがシャムクロコダイルの特徴です。

ポピュラーなワニ革のひとつです。以前は日本やシンガポールで多く使用されていましたが、近年のワニ革の需要の増加に伴い、ヨーロッパの商品にも使用されるようになったと聞いています。

現在、商取引されているシャムクロコダイルの皮は、全て養殖によるもので、タイ・ベトナムなどのインドシナ諸国のファームで生産されています。ワシントン条約の事務局に登録されているファームからのみ輸出が許可されています。

製品メーカーの目線で見るとシャムクロコダイルは他の種類のクロコダイルに比べると、前足から後足にかけての胴が長い特徴(同じ腹幅の対比)があります。胴長であるために大きいサイズの商品やパーツを多く使用するデザインなどには重宝されています。

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ミシシッピーワニ:アリゲーター

腹部のうろこの形状はクロコダイルに比べてやや長めの長方形をしています。横腹のうろこは丸い形状です。アリゲーターは前記した4種のクロコダイルと比べても全体に非常に「 胴が長い 」というアリゲーター特有の特徴を持っています。

また、クロコダイル スモールスケールのところでご説明しました通り、アリゲーターにはクロコの証であり感覚器官である「 穿孔 」はありません。

日本ではどういう訳かワニ革と言うと「クロコダイル」という呼び名が使われるので「アリゲーター」というと少し安価なイメージを持たれている方々が多い様です。しかし、価格的にはナイルクロコよりも高額で取引が行われ、世界取引量は年間約45万~50万枚で「世界で一番使用されている高級ワニ革」なのです。

養殖はルイジアナ州を中心にスイスの高級時計バンド用として大規模に行われています。野生から採取したワニの卵を孵化させ1年間ファームで育て、40万枚の内の約20万枚が時計ベルトを作るのに丁度よいサイズになると出荷されていきます。

1年間育てた残りの稚(ち)ワニの一定量を、野生の生息数が減らないように自然の沼や河川に戻します。この養殖の方法を「ランチング(Lauching)」と呼びます。又、野生のアリゲーターも毎年数量を定めて捕獲が許可されています。

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カイマンワニ

カイマンはエキゾチックレザーの業界内では、バビラスや石ワニ、とも呼ばれています。カイマン類の腹部の四角形のうろこの下にカルシウム分が沈着した硬い部分がありカイマン革の特徴となっています。このためクロコダイル・アリゲーターより安価な革として使用されています。

なお、カイマン革を「カイマンクロコ革」や「クロコダイル革」と表示はできません。

  • クロコダイル属に属するスモールクロコ・ラージクロコ・ナイルクロコ・シャムクロコの革を使用した時は「クロコダイル」
  • アリゲーター属の革を使用した時は「アリゲーター」
  • カイマン属の革を使用した時は「カイマン」

と表示することが適正な表示と考えております。

クロコダイルに比べると全体の革の感触は硬さを感じます。しかし、近年では鞣(なめ)し・仕上げの技術の向上により、多様な仕上げも可能となりました。

ファッションに合わせた、ソフトなマット仕上げの革や表面に特殊な加工を施したものなど、腹部及び背部を活かしたハンドバッグや財布などのワニ革製品の入門編として、価格もお手頃なので適しているかもしれません。

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最後に

既にクロコダイルをはじめとする、ワニ革アイテムをお持ちの方や関心のある方でも「ワニ革はどれも一緒じゃない?」「違いがよくわからない!」と思っていらっしゃる方も少なくないのではないでしょうか。実際にこの道20年以上の専門業者でもその識別や鑑定に迷うことも多々あります。

外見に際立った大きな違いがないワニ革ではありますが、最高級の皮革素材だからこそ、高価な素材だからこそ、個々の違いや特徴を少しでもご理解いただければと、今回のブログ発信となりました。

ワニ革に関する価値基準のひとつとして、皆様のお役に立てることを願っております。

※転載参考文献

全日本爬虫類皮革産業共同組合:

一般社団法人 日本皮革産業連合会:

「エキゾチックスキンの基礎知識」(2015)

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