こんにちは。株式会社イシカワの吉川です。私たちが取り扱うエキゾチック各種には、素材独自の特徴と存在感があります。今回はそんな個性的で魅力的なエキゾッチクレザーの種類にはどんな素材があるのか。それぞれにどんな特徴があるのか。順を追ってご紹介していきましょう。
エキゾチックレザーの分類
エキゾチックレザーとは、業界内で一般革と呼ばれている「牛・馬・羊・豚」などの家畜として飼育された動物から供給される皮革でない、ワニやパイソンなどの希少動物からえられる皮革の事を指します。
エキゾチックレザーのほとんどは「ワシントン条約」などにより利用制限がある為、牛革などの一般革に比べて希少性の高い素材として位置付けられています。その希少性が高く、高級素材といわれているエキゾチックレザーは大きく分けて以下のように分類されています。
※ワシントン条約については別の機会にご説明いたします。
・爬虫類 ワニ・トカゲ・ヘビなど
・鳥 類 オーストリッチ(ダチョウ)・レアなど
・魚 類 サメ・エイなど
・哺乳類 ゾウ・アザラシ・オットセイなど
・その他 カバ・ペッカリーなどの野生動物も含まれています。
エキゾチックレザーの最大の魅力は独特な模様、個性的な表情、そして一般的な牛革とは違う風合いがそこにはあるのです。それでは具体的にその素材ごとに特徴も含めた説明に移りましょう。
ワニ
爬虫類皮革の代表的なものがワニ革です。他の皮革にはない独特のうろこが特徴です。革として利用されるワニは、クロコダイル・アリゲーター・カイマンの3種類に大きく分類されます。今回は使用頻度の高い「肚(はら)ワニ」を中心にご説明いたします。
1.スモールクロコダイル:イリエワニ(和名)
細かく揃った腹部のうろこが美しく、ワニ革の中でも最高級品と言われています。需要と供給のバランスから高値で取引され「ポロサス」という名称でも有名です。
2.ラージクロコダイル:ニューギニアワニ(和名)
腹部のうろこは正方形に近く、うろこの大きさはスモールクロコよりも大きい。日本でも古くから使われているクロコダイルです。ラージクロコの「ラージ」は革が大きいという意味ではなくうろこが大きいという事を指します。
3.ナイルクロコダイル:ナイルワニ(和名)
スモールクロコ・ラージクロコと同じく日本ではポピュラーなワニ革。世界的にも需要があり、腹部の四角形のうろこはスモールクロコに似て美しく整っています。
4.シャムワニ:シャムワニ(和名)
取引されるシャムワニは全て養殖によるもので、タイ・ベトナムなどから輸入されています。腹部のうろこはスモールクロコに似ていますが、やや大きめです。
5.アリゲーター:ミシシッピーワニ(和名)
世界で一番使用されているワニ革で、主に時計ベルト用に大規模な養殖が行われています。他のワニ革に比べると胴が長いのが特徴です。腹部のうろこはカジュアル色の強い長方形をしています。
6.カイマン:パナマメガネカイマン(和名)
全体的に骨質部が多く硬い為に「石ワニ」とも呼ばれます。最近では柔らかく仕上げる技術が向上し、その用途も広がっています。また、カイマン革を「カイマンクロコ」「クロコダイル」とは表示できませんのでご注意ください。
ワニ革には大きく分けて2つの仕上げ方法があります。発色が良く光沢を重視したグレージング仕上げ(シャイニング)。そして光沢を抑えよりソフトな仕上げを重視したマット仕上げ。グレージング仕上げは高級感、マット仕上げはカジュアル感を味わえる仕上げとなっています。
ヘビ(パイソン)
ヘビは大きな類のパイソンと小さな類のスネークからなります。個性的で存在感のあるはんもんやうろこ模様、そして他の皮革にはない独特の風合いがパイソン革の魅力であり、人気を博しています。その時のトレンドやファッションにより、特徴であるはんもんや模様を活かしたり、薬品処理で模様を脱色するなどの仕上げが行われています。また、背部を活かしたベリーカット、反対に腹部を利用するバックカットのタイプがあります。
1.ダイヤモンドパイソン:アミメニシキヘビ(和名)
全身にダイヤ型の連続的な模様があるところから、ダイヤモンドパイソンと呼ばれています。パイソンの中でも世界的にポピュラーな種類です。他の皮革にはない美しい模様とワイルド感があります。
2.モラレスパイソン:ビルマニシキヘビ(和名)
全身に石垣の様な不規則な図形模様があり、その個性的な模様はヨーロッパを中心に人気があります。沖縄の蛇皮線はこの革が使用されています。
3.レッドパイソン:ヒイロニシキヘビ(和名)
全身が赤味を帯びているところからレッドパイソンと呼ばれています。はんもん模様は持っておりますが、あまり美しいとはいえません。その為、模様を脱色する仕上げが多く採用されています。尾部が短かく胴が太い体型をしているのが特徴です。
ソフトで独特な風合いをもつパイソンは様々なデザインの製品に対応できるエキゾチックレザーの万能素材です。ファッション性の高いアイテムによく使用されています。
トカゲ
英語でリザードのことです。美しく整然と並んでいる丸い粒上のうろこが特徴です。世界中には数多くのトカゲが生息しておりますが、皮革製品に利用されているものは極めて少ないのが現状です。パイソン同様その種類独特のはんもん模様を活かす場合と薬品により除去してうろこのみを活かす場合があります。革質はしっかりとして頑強です。
1.リングマークトカゲ:ミズオオトカゲ(和名)
トカゲ革の最高級品でモニターと呼ばれる中型~大型のトカゲが主として革に利用されています。背中に輪状及び点状のはんもんが並んでいるところからリングマークトカゲと呼ばれています。
2.アフリカトカゲ:ナイルオオトカゲ(和名)
リングマークトカゲと同じくサイズも大きく利用価値が大です。はんもん模様は小さな点状のため、大きな特徴とはなりません。その為、多くは模様を除去した仕上になっています。
トカゲ革は美しく整然と並ぶまるいうろこの表情から、フォーマルなイメージの強い製品に使用されている傾向があります。スーツを着る機会の多い方々には品格を高めてくれる素材のひとつですね。
オーストリッチ
天然素材の中でもスペシャルレザーとして爬虫類皮革と共にエキゾチックレザーの代表的な素材とされているのがオーストリッチ(ダチョウ)です。野生のものは減少傾向にあるため、南アフリカなどでは積極的なオーストリッチの飼育が行われていて、皮革としての計画的な生産と管理がなされています。
1.オーストリッチ:ダチョウ(和名)
オーストリッチとはダチョウのことで、羽毛を抜いた後の突起を「クイルマーク」と呼びほかの皮革にはない特徴となっております。柔軟性もあり強くて丈夫です。クイルマークはオーストリッチ1枚の中に約40%ほどの面積しかありませんので希少な高級革と位置付けられています。
※脚部の革はレッグと呼ばれています。 爬虫類に似たうろこ上の模様が特徴となっています。
2.アメリカダチョウ:レア(和名)
オーストリッチの仲間として外観がアフリカのダチョウに似ているところから、アメリカダチョウとも呼ばれるレアという鳥がいます。羽根を抜いた後の突起も小さく、皮質も薄いのが特徴です。現在日本ではあまり使用されていません。
クロコダイルやパイソンと肩を並べるプレミアムレザーのオーストリッチですが、特に特徴となっているクイルマークがひとつの製品全体にどれくらい使用されているか、割り合いを占めているかによって商品価格に大きな違いが出ます。
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サメ
サメは肉・ヒレは食用に、肝臓からは薬品や化粧品の原料に、皮は硬いうろこをヤスリやわさびのおろし金、また、楯鱗(じゅんりん)と呼ばれる硬い表皮を取り除き、柔らかく鞣(なめ)し皮革製品にと有効利用されています。
1.ヨシキリザメ(和名):Blue shark
日本近海で漁獲され、革として使用されるものは主にヨシキリザメです。頭部から尾に向けて細かい連続した網目状に凹凸があり、サメ革の特徴となっております。
2.タイガーシャーク:イタチザメ(和名)
メキシコ湾・カリブ海で水揚げされる事からカリビアンシャークとも呼ばれています。ヨシキリザメに比べると網目模様は荒いですが、大型のため大きい製品を製作する時には適しています。
日本近海で獲れるヨシキリザメは宮城県の気仙沼で多く水揚げされます。原料のほとんどを輸入に頼っているエキゾチックレザーですが、原料の調達から皮をなめし、色を付ける染色までの工程を全て日本で行う唯一の素材がこのヨシキリザメです。まさに純粋なMADE IN JAPANです。
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エイ
サメの近縁種であるエイはサメ同様、楯鱗(じゅんりん)と呼ばれる硬いうろこがあります。革として利用されるのはスティングレー(アカエイ)で、最近ではガルーシャという名称でも知られています。
1.スティングレー:アカエイ(和名)
スティングレーの皮の表皮を取り除くと「石」と呼ばれるリン酸カルシウムから成る小さい粒状のうろこが出てきます。これがビーズの様に輝き、美しい表情を見せています。背中の中央には真珠の様なやや大きめの「石」が縦に数個並んでいて、これを「スティングレーハート」「スターマーク」などと呼び、ユニークかつ神秘的な特徴を見せています。
硬いうろこでおおわれている為、エキゾチックレザーの中では硬い革のひとつです。最近では技術の向上で、大分柔らかくなめせる様になりましたが、加工をほどこし製品にするには技術と経験が必要になります。
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ゾウ
エキゾチックレザーの中でもゾウ革は輸出入の規制が厳しくチェックされている素材です。現在アジアゾウはワシントン条約の規制により、商業取引はできません。しかし、アフリカゾウの中で、ジンバブエ・ボツワナ・ナミビア・南アフリカ産の皮・革の輸出入は可能です。(2017.5月現在)
したがって、現在流通しているゾウ革は、アフリカゾウという事になります。
1.エレアント:アフリカゾウ(和名)
ゾウは非常に大きな動物ですので、鼻・耳・ボディと各部位に切り分けられて輸入されてきます。厚くて丈夫、そして革の表面は各部位に特有のヒダ・シワがあり、細かく粒状に盛り上がっている表情がゾウ革の特徴であり、象のみが持つ自然の妙といえるでしょう。
見た目のワイルドで重厚な表情、そして厚くて丈夫な革の質感から主にメンズの製品に使用される事が多い素材です。
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シール
アザラシやオットセイ、海に住む哺乳類、海獣(かいじゅう)の革をシールと呼びます。毛を脱毛したアザラシ・オットセイを革として利用した場合、その表面は非常に類似しており、製品になると、ことさら判別が困難になる程その表情は似ています。
1.ハープシール:タテゴトアザラシ(和名)
アザラシは主として毛皮用になめし、防寒衣・防寒靴などに使われています。日本ではファッション性の高さから、バッグ・小物などにも毛皮として使用されています。頭から尾に向けて独特な波状のウネ模様があり、アザラシ革の特徴となっています。
2.ケープシール:ミナミアフリカオットセイ(和名)
アザラシと同様にオットセイも海獣(かいじゅう)の革であり、厚みがあり丈夫です。オットセイは頭から尾に向けて独特な格子状のウネ模様がありますが、アザラシと比べるとやや小ぶりです。
海に住む哺乳類、海獣(アザラシ・オットセイ)は同じ海に住む魚類(エイ・サメ)とはまた違ったシールスキン。独特なソフトな革の質感があります。それを生かす為、仕上げもツヤを抑えたマットでソフトな仕上げが主流になっています。
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最後に
エキゾチックレザーとはどんな皮革を指すのかおわかりいただけましたか。今回ご紹介した内容はエキゾチックレザーの基礎的な知識にすぎません。エキゾワールドに1歩足を踏み入れたという感じでしょうか。
皆様の身回り品であるバッグ・財布・靴・ベルトなど全てがエキゾチックレザーで製作され、本物志向の方々を魅了し、最後に行きつく場所、プレミアムな素材ともいわれています。
そんなクロコダイル・パイソンに代表されるエキゾチックレザーの奥深さ・魅力を今後もあますことなく、じっくりとお伝えしてまいりますので、どうぞご期待ください。
※転載参考文献
全日本爬虫類皮革産業共同組合:
一般社団法人 日本皮革産業連合会:
「エキゾチックスキンの基礎知識」(2015)
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